季節の変わり目、なんだか体がすっきりしませんか

季節の変わり目、特に気圧が不安定な時期になると、なんだか体がすっきりしない――そんな経験はありませんか。 実は私自身も毎年この時期は同じように感じていて、他人事ではないんです。診察室でも、この時期に本当によく耳にするお悩みです。 今回は気圧の変動によるだるさの正体から、これから本格化する夏バテの予防まで、まとめてお話ししていきますね。

午後になると異常に眠くなる。お昼ご飯のあとデスクワークをしていると急にまぶたが重くなって、コーヒーを何杯飲んでも頭がぼーっとしてしまう……。 そのお気持ち、痛いほどよく分かります。でもそれは決して、あなたが怠けているわけでも、単なる睡眠不足なわけでもありません。 実は最近の激しい気圧の変動が、体に直接ダメージを与えている可能性が高いんです。

そのだるさ・眠気、体の中で何が起きているのか

このだるさや眠気、体の中で一体何が起きているのか、少しのぞいてみましょう。ポイントになるのは次の3つのステップ。まるでドミノ倒しのような現象なんですよ。

1
内耳のセンサーが気圧の変化を敏感にキャッチ
雨の前など気圧が下がる場面で、耳の奥にある内耳のセンサーがそのわずかな変化を敏感に感知します。
2
脳への過剰なアラート
内耳から脳に対して「気圧が変わった」という情報が過剰に伝わり、体の警戒信号がオンになります。
3
自律神経の乱れと強制お休みモード
交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、体が強制的にお休みモードに入ってしまいます。あのひどいだるさや異常な眠気は、こうして生まれるのです。

自律神経の乱れと深く関わる「水滞」という考え方

この自律神経の乱れと、実はとても深く関わっているのが、東洋医学でいう「水滞(すいたい)」という考え方です。 専門用語っぽく聞こえますが、実はとても身近な状態を指しているんですよ。

シンプルに言うと、体内の水分の巡りが悪くなり、余分な水分が体に溜まってむくみを引き起こしている状態のこと。 気圧が下がると細胞が膨張しやすくなり、体内の水はけが極端に悪くなってしまうんです。 これが体を重く感じさせたり、頭をぼーっとさせたりする、水滞の正体なんですね。

では、この水滞にどう対処すればいいのでしょうか。そこで登場するのが五苓散(ごれいさん)という漢方薬。 この薬は体内にたまった余分な水分の排出を促し、水はけをぐんと良くしてくれます。 つまり、今あなたが感じている重だるさや眠気に、すぐに効く「盾」になってくれるお薬なんです。むくみが取れると、頭のどんよりした重さもすっと軽くなりますよ。

今の不調の先にある「気虚」というもう一つの問題

さて、ここまでは今起きている不調、つまり“現在”のだるさへの対処法でした。でも体づくりはこれで終わりじゃありません。 気圧の変動を乗り越えたら、次にやってくるのは過酷な夏の暑さです。今のうちから先回りしてケアしておかないと、本格的な夏バテに引きずり込まれてしまいます。

そこでぜひ知っておいてほしいのが「気虚(ききょ)」という状態。 先ほどの水滞が水分のトラブルだとすれば、こちらはずばりエネルギーのトラブルです。ベースとなる生命エネルギーそのものが不足してしまっている状態、と言えばイメージしやすいでしょうか。 たとえるなら、スマホのバッテリーが常に残量20%の赤色表示になっているような、あのヒヤヒヤする感じ。気温が上がると体力の消耗も進むので、このエネルギー不足はさらに加速してしまいます。これが夏バテの根本的な原因なんです。

💡 補中益気湯という味方

この気虚を防ぐための頼もしい味方が「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」という漢方薬。 五苓散が水はけをよくする役割だとすれば、こちらは強力なモバイルバッテリーのようなものです。胃腸の働きを底上げして、食べたものをしっかりエネルギーに変える力を取り戻してくれます。 これから来る厳しい暑さに打ち勝つための、事前のバッテリーチャージとして役立ってくれますよ。

「今日のケア」と「明日への備え」、2つの時間軸

ここで少し頭を整理してみましょう。五苓散と補中益気湯、この2つのアプローチは時間軸がまったく違うんです。

現在
五苓散 ―― 今日を快適に
今のむくみや眠気を解決する、速効性のあるアプローチです。
未来
補中益気湯 ―― 明日のために
夏の体力維持や胃腸機能の低下防止を担う、エネルギーの備蓄です。

今の症状のケアと、これからの体力の底上げ。この2つはまったく別の役割を持っています。 いくら五苓散で今の眠気をとっても、胃腸が弱っていてご飯が食べられなければ、結局エネルギー不足でバテてしまいます。 逆に補中益気湯でエネルギーを補おうとしても、体中が水分でうまく巡らず自律神経が乱れていては、せっかくのお薬もうまく吸収されません。 今の眠気とだるさをしっかり管理しつつ、食事をきちんと取れる体をキープする――この両輪を回すことこそが、本格的な夏を乗り切る戦略なんです。

今日から始められる、生活習慣のヒント

ここからはお薬だけでなく、毎日のちょっとした工夫もご紹介しますね。まずは食事から、ポイントは2つです。

続いては運動のヒント。これがなかなか面白いアプローチで、お天気によって運動の質を変えるのがポイントなんです。

気圧が低い日
無理は禁物。自律神経が敏感になっているので、深呼吸や軽いストレッチでリラックスを心がけましょう。
☀️
高気圧の晴れた日
チャンスです。ウォーキングなど軽く汗をかくアクティブな運動を取り入れてみましょう。

高気圧の日に軽く汗をかくことには、もう一つ重要な意味があります。それが「暑熱順化(しょねつじゅんか)」。 本格的な夏が来る前に体を暑さに慣れさせ、上手に汗をかける体質を作っておくプロセスのことです。 今の時期から軽い運動でこの暑熱順化を進めておくと、真夏になっても体温調節がスムーズにできて、熱中症や夏バテのリスクをぐっと下げられますよ。

👩‍⚕️
新本町クリニック 院長より

人間の体は本当に十人十色。水滞が強く出ている方もいれば、気虚が強く出ている方もいて、これは人によってまったく違います。 だからこそ「自分はこうだ」という自己判断だけで終わらせず、ぜひ私たち専門家を頼ってくださいね。 お一人お一人の声を聞き、脈を見て、あなたにぴったりの最適なバランスを一緒に見つけるのが私たちの仕事です。皆さんが毎日を快適に過ごせるよう、心からサポートしたいと思っています。

おわりに

もうお天気に自分のエネルギーレベルを振り回されるのは、そろそろ終わりにしませんか。 今日お話しした知識、つまり今のむくみを改善して未来のエネルギーを蓄えるという視点を持てば、気圧の変化も夏の暑さも、ただ怖がるだけのものではなくなりますよ。

今日始めた小さなアクションが、明日の大きな活力に必ずつながります。ぜひできることから始めてみてくださいね。

※本コラムの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。 体質や持病・お薬との相互作用などが気になる方は、受診前に医師にご相談ください。 効果には個人差があります。